202405月号 さざれ石が巌となる

「石上げの行」で使うような石は、非常に貴重なもので、長い歴史を持っています。
 以前、地質学者でもあった鹿沼景揚先生から東京生命学園で、何千万年も歴史があると教わりました。
 今から三億三千年前はアジア大陸の外側で日本列島のある付近は細長い帯のような長い地域で、ゆっくりゆっくり沈み始めました。一年間に一ミリよりゆっくりだったそうです。その沈み始めた海底に、アジア大陸側から風化によってくずれた石ころが、流れてきてつもりはじめたものです。このようにくだかれたこまかい石のことを「さざれ石」といいます。さざれ石があとからあとから流れてくるにつれて、海底は沈んでいきました。沈むとまたその上に石ころが積もります。このようにして一万メートル以上の厚い厚い地層が出来上がりました。想像もできないようなゆっくりとした動きの中で、さざれ石は積み重ねられ重みで固まり、かたい岩となりました。こうしてできた岩石が礫岩です。一万メートル以上にも海の底に地層がつもりますと、今度は、沈んだときと同じくらいののろい速さでゆっくりと上に向かってのぼりはじめます。想像も出来ないほどののろさで、一万メートルにも及ぶ高い山脈が出来ていったということです。このようにして、海の底に堆積し始めたさざれ石がかたまっていわお(岩石)となり、やがて山となってそびえるまでに、およそ一億数千万年という年数がたっています。鹿沼先生の研修室にお伺いした時、さざれ石が長い年月をかけて巌となった採取した石を見ましたが宝石よりきれいに感じました。(このさざれ石の文は鹿沼景揚著の『「神の子」の教育下』を参考にしました)
この岩は神社のご神体になっている場合があります。
奈良県の大神神社のご神体は三輪山ですが、三輪山の頂上には大物主神が祀られていますが、ご神体は岩になってます。伊勢神宮の所管社に五十鈴川を守る滝祭神がありますがこのご神体も岩です。このように自然の中でも大切なものとして扱われました。石上げの石はこのように大切なものとして見ていきましょう。
 山形県の大きな岩に建った立石寺の岩は、全山花崗岩ですが、其処で松尾芭蕉が有名な句を作りました。
しずかさや岩にしみ入る蝉の声

 真夏に蝉の声が大きな岩にしみ入ったように鳴いている様子が浮かんでまいります。この蝉のように一木一草の中にすべての中に鳴り響くものがあります。神様の息吹が鳴り響いています。私たちの中にも生かしてやまない生命の響きです。それをじっと感じて俳句を自分なりに鑑賞し、分からなくても上手下手ではなくちょっとでも感動したら作ってみましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です