202504月号 貴方より益して素晴らしい神様が坐す

 今は三月の末で桜はまだですが、出勤の際、分社の庭の隅につくしが一本咲いていました。春が来たなという感じを受けました。 
 『新版叡智の断片』(谷口雅春先生著)に次のようなご文章があります。
 『朝起きて見ると春が来たという感じがする、それは三月下旬の或る日のことである。もう何処となく、春の新緑の気が、色とはハッキリ言えないが庭の梢々に漂うているのである。何の気もなく見れば何でもないことだけれども、音もなく、春の気が動いているということは何という素晴らしいことであろう』(以下略)
 近頃は寒暖の差が大きかったりしますが、木の芽が段々と膨らんできたり、教化部の分社の前の参道にも、すみれやつくしが萌えいでて着実に春が近づいてきていると感じられます。そういう感じる心から俳句や和歌や詩が生まれてきます。
 春だけでなく、すべての人・事・処の中に、神様の息吹を感じてみますと、どんな環境の中にも神様の息吹が感じられます。
『古事記』の中に「天の岩戸開き」の神話があります。高天原という神界に天照大御神さまの弟の須佐之男命さまが暴れたとき、あまりの醜さに天照大御神さまが岩屋戸にお籠もりになられました。そのとき、世の中はすべて暗く、万の妖がことごとく起こりました。八百万の神様たちは天の安河の河原に集まられて、思金神に御心を聞いて神事を実践することになりました。長鳴きどりを鳴かしめ、岩戸の前で真賢木を根のまま堀り取り、鏡や勾玉を作り枝にかけました。天宇受売命が桶(汚気)を伏せてその上で神懸かりして踊り、神々は高天原が揺するほど楽しく咲いました。岩戸の中でお籠もりをしている天照大御神は、神々は悲しんでいると思われるのにおかしいと思い、岩戸を細く開けて「神界の高天原も現象世界も皆暗く、万の妖いが起こっていると思うのになぜそんなに高天原が揺するぐらい楽しく咲っているのか」とお聞きになりました。すると天宇受売命は原文では次のようにお応えしました。
 『汝命に益して貴き神坐す。故、歓喜び咲ひ楽ぶぞ」とまをしき』と書かれていて、神々は世の中が真っ暗で、悪いことが次から次から起こっていても、その中に素晴らしい天照大御神がましますと実感できたのでした。
 あなた様よりも益して素晴らしい神様がまします。この兆しを全ての暗いと思われる中に神々が感じたように感じることが出来ると、自分の天の岩戸が開かれると思います。暗いときほど「貴方より益して素晴らしい神様が坐します」と咲い楽しみましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です